UPSは、電池から作れるのか

オフグリッドのデータセンターを考えていると、次の疑問にたどり着きます。リン酸鉄リチウム電池を束ねて、UPS(無停電電源装置)を作れるのか。

答えは、作れる。ただし、電池をつなげば終わりではありません。電池を管理する仕組みと、電池に合った充電の仕組みが要ります。

なぜ、リン酸鉄リチウムなのか

UPSの電池といえば、昔から鉛蓄電池が使われてきました。リン酸鉄リチウム電池には、それに比べて次のような利点があるとされています。

  • 熱に強い:ほかのリチウムイオン電池に比べて熱暴走を起こしにくく、発火しにくい。
  • 長持ちする:充電と放電を繰り返せる回数が、鉛蓄電池よりずっと多い。
  • 軽い:同じ容量なら、鉛蓄電池より軽い。

その代わり、買うときの値段は高めです。長く使えることを考えて、元が取れるかどうかを判断します。

自作するなら、必ず要るもの

電池の管理装置(BMS)

電池の中の一つひとつのセルの電圧や温度を見張り、充電しすぎ・使いすぎを防ぎ、セルごとのばらつきを整える装置です。電池を束ねて大きくするほど、全体を見張る仕組みが大事になります。BMSを内蔵した電池モジュールを使うのが一般的です。

電池に合った充電の仕組み

鉛蓄電池用の充電器や、古いUPSをそのまま使うと、充電の電圧の決め方が違うため、リン酸鉄リチウム電池を傷めるおそれがあります。リン酸鉄リチウムに対応した充電器・インバーターを使うのが前提です。

大きな電池の組み立てや配線は、感電や火災の危険があり、資格や届出が必要になる場合もあります(連載の第6回)。最初は、完成品を使うことをすすめます。

UPSは、方式で守れるものが変わる

UPSは、停電したときの切り替え方によって、守れる機械が変わります。

UPSの主な方式
方式切り替え向いているもの
常時商用給電停電の瞬間、わずかに途切れる一般的なパソコン、周辺機器
ラインインタラクティブ途切れは短く、ふだんの電圧の変動も補正するNAS、小さなサーバー、ネットワーク機器
常時インバータ給電途切れない止まってはいけないサーバー

方式が上がるほど、値段も、作る難しさも上がります。どこまでの途切れを許せるかで選びます。

市販品の種類

  • ポータブル電源:リン酸鉄リチウム電池を積み、停電時に自動で切り替わる機能を持つものがある。コンセントに挿してつなぐだけで、いちばん手軽。
  • ラックに載せる電池モジュール+インバーター:サーバーラックに組み込む形。電池を足して容量を増やせる。
  • ハイブリッドインバーター+電池:充電器、切り替え、太陽光の制御が一体になった装置と、電池を組み合わせる。オフグリッドの電源の中心になる形。

ポータブル電源の「UPS機能」は、製品によって切り替えにかかる時間が違います。仕様に書かれた切り替え時間を確かめ、守りたい機械で実際に停電を試してから頼るようにします。

最初は、モデム・ルーター・NASだけ守る

私が最初に守りたいのは、モデムとルーターとNASだけです。これなら消費電力は小さく、小さなUPSで足ります。

停電中に、何時間もつか

もつ時間は、電池の容量を、つないだ機械の消費電力で割れば、おおよそ出せます。電池から電気を作るときの損失を見込んで、少し割り引きます。

もつ時間の目安
もつ時間(時間) ≒ 電池の容量(Wh) × 0.8 ÷ 機械の消費電力(W)

例:500Whの電池で、合計40Wの機械を守る
    500 × 0.8 ÷ 40 = 約10時間

0.8は、変換の損失や、電池を使い切らない余裕を見込んだ仮の値です。実際の値は、製品と使い方で変わります。

NASを、安全に止める

電池が尽きる前に、NASを安全に止める必要があります。多くのNASは、UPSからUSBなどで信号を受け取って、自動で止まる機能を持っています。UPSを選ぶときは、自分のNASがそのUPSからの信号を受けられるかを確かめます。受けられない場合は、残りの時間を見て自分で止める手順を決めておきます。

TODO:実際に使うUPS(またはポータブル電源)と、NASとの連携を試した結果を追記する。