世界はデータセンター建設ラッシュ、借りる側は請求書に悩む
世界中でデータセンターの建設が続く一方で、借りる側の事業者は、クラウドやAIのAPIの請求に悩んでいます。同じ計算をするのに、なぜクラウドはこれほど高くつくことがあるのか。
結論から言えば、クラウドの代金は、機械の代金ではない。何に払っているのかを分解すると、自前でインフラを持つ意味が見えてきます。
クラウドの代金に含まれているもの
すぐ増やせて、すぐやめられる柔軟性
クラウドなら、明日サーバーが100台必要になっても、数分で用意できます。事業をやめるときも、削除すれば翌月から請求は止まります。機械を買って、置き場所を用意して、処分する手間がない。この柔軟性は、そのまま料金に上乗せされています。
運用を任せる手間賃
データベースのバックアップ、OSの更新、故障した部品の交換。クラウドのマネージドサービスは、こうした仕事を代わりにやってくれます。企業は、そのぶんのエンジニアを雇う代わりに、クラウドに払っているとも言えます。
外へ出ていく通信の料金
海外の大手クラウドの多くは、クラウドからインターネットへ出ていく通信の量に応じて料金がかかります。利用者が増えて通信が増えるほど、請求も増えます。国内のVPSには、通信量を定額にしているものが多く、ここは大きな違いです。
使われずに放置された資源
見落とされがちなのがこれです。試しに立ち上げたサーバー、使われなくなったストレージ。止め忘れたものが、夜も休日も課金され続けます。
自前が有利になるとき、不利になるとき
ここまでを裏返すと、自前でインフラを持つのが有利になる条件が見えてきます。
| クラウドが向く | 自前が向く | |
|---|---|---|
| 負荷の形 | 急に増えたり減ったりする | 決まった量を、24時間回し続ける |
| 続けるかどうか | すぐやめるかもしれない | 長く続ける前提がある |
| 通信の量 | 少ない | 多い |
| 運用する人 | いない、または任せたい | 自分でやれる |
柔軟性が要らない仕事に、柔軟性の料金を払い続ける必要はありません。24時間同じ仕事を回し続けるなら、借りるより持つほうが安くなりやすい。ここが、自前のインフラの出発点です。
自前にも、見えにくい費用がある
ただし、自前が一方的に安いわけではありません。クラウドが代わりにやってくれていたことを、全部自分でやることになります。
- 自分の時間:組み立て、設定、更新、故障の対応。その時間を本業に使っていれば、いくら稼げたか。
- 最初の出費:機械を買うお金が、最初にまとめて出ていく。
- 責任:止まったとき、破られたとき、誰も代わりに直してくれない(考察「セキュリティという参入障壁」)。
インフラをいじること自体を楽しめるか、それとも苦役と感じるか。この費用の重さは、そこで大きく変わります。
私の場合
私の用途は、広告配信やバックエンドの処理のように、決まった仕事を24時間回し続けるものが中心です。インフラを組むこと自体も嫌いではありません。条件は、自前の側にそろっています。
ただ、最初から持つのではなく、共用サーバー、VPS、自宅のNASと、借りる部分を少しずつ持つ部分に置き換えていく。いきなり全部を持てば、最初の出費と責任が一度に来るからです。その順番を書いたのが、連載「250円サーバーから、自前データセンターへ」です。