業務用の回線は要るのか
処理の本体を自宅のNASに置くと、利用者とのやり取りは、すべて自宅の回線を通ります。家庭用の光回線で足りるのか。業務用の高い回線が要るのではないか。
私の見立ては、今の規模なら、すぐにはボトルネックにならない、です。その理由と、先に気をつけるべき点をまとめます。
ざっくり計算してみる
仮の数字で計算してみます。回線の実際の速さを300Mbps、1回のやり取りで返すデータを50KBとします。
- 300Mbpsは、1秒あたり約37.5MB。
- 37.5MB ÷ 50KB で、1秒あたり約750回のやり取り。
実際の速さは時間帯や地域で大きく変わり、やり取りの大きさも用途で違うので、これは目安にすぎません。それでも、JSONのような小さなデータを返すAPIや、普通のWebページなら、回線の太さが先に限界になるのは、かなり先だと分かります。
さらに、画像やCSSのように変わらないファイルは、入口のVPSで返せます(連載の第2回)。自宅まで来る通信は、そのぶん減ります。
太さより先に、詰まるところ
ルーターの同時接続数
安い家庭用ルーターは、同時にさばける接続の数に限りがあり、回線に余裕があっても、ルーターが先に音を上げることがあります。回線より先に、ルーターを見直します。
上りの帯域
家庭用の回線は、下りに比べて上りが遅いことがあります。サーバーとして使うときに大事なのは、利用者へ送り出す上りのほうです。
事業者の規約と通信制限
家庭用の回線の中には、サーバーの運用を制限していたり、大量の通信に制限をかけたりする契約があります。技術の問題より先に、契約の問題で止まらないよう、規約を確かめておきます。
IPアドレスが変わること
家庭用の回線は、IPアドレスが変わることがあります。ただ、自宅の側から入口のVPSへトンネルを張る形(連載の第3回)なら、アドレスが変わってもつなぎ直すだけで、影響は受けません。
足りなくなったら、複数契約する
それでも足りなくなったら、家庭用の回線を複数契約します。高い業務用の回線を1本引くより、家庭用の回線を何本か引くほうが、安く、止まりにくくできる場合があります。
- 別の事業者、別の経路で引く:同じ事業者の回線を2本引いても、その事業者の設備が止まれば両方止まる。
- 切り替えと振り分け:複数の回線を扱えるルーターを使い、1本が止まったらもう1本へ切り替える。
- 目的ごとに分ける:利用者とのやり取り用、バックアップの転送用、管理用と、回線ごとに役割を決めることもできる。
トンネルは、NASの側から、生きている回線を使って張り直せます。回線が複数あれば、どれか1本が止まっても、トンネルは別の回線でつながる。回線の冗長化と、トンネルの仕組みは相性がいいのです。
電気や拠点も含めた冗長化は、連載の第6回・第7回で扱っています。